ガラスの吸盤と雫きらめく八手
評論
序論 水滴をまとった白い球状花と、窓に付いた透明な吸盤を向かい合わせた作品である。花は左から中央へ広がり、右端のガラス面が縦の境界をつくっている。奥には暖色の照明と濡れた通路の反射が見え、冷たい青を帯びた葉の間へ金色の光が通っている。植物と透明な道具の双方に水と光を集め、異なる表面の近さを示す構成となっている。 記述 下寄りの主花では小さな白花が放射状に集まり、細い雄蕊の黄色い点が外周へ伸びている。花弁や蕊には細かな水粒が付き、下端には丸く大きくなった滴がいくつも垂れている。右の吸盤は楕円に見える円板と突起を持ち、その下にも一滴が下がっている。下部には掌状の葉脈を持つ濃緑の大きな葉があり、上方には小さな花球と緑の蕾が続いている。 分析 主花の放射状の線と吸盤の滑らかな円周が、画面左右に異なる円形を置いて呼応している。植物の斜めの茎に対して右端の窓枠は直立し、密な細部の中に安定した方向を与えている。金色の反射は奥の通路を下へつなぎ、手前の葉の青い照りと交互に現れる。花に付く多数の小滴と吸盤の一滴では光の集まり方が違い、同じ水が大きさによって異なる形を見せている。 解釈と評価 一時的に保たれる滴の形が、花と道具の間に共通の出来事をつくり、素材の違いを越えた親しさを生んでいる。独創性は吸盤を脇役として隠さず、花球と比較できる高さに置いた点にある。白い花弁、透明な樹脂、光沢の強い葉をそれぞれ別の反射で描き分ける技法も効果的である。ただし画面全体に明るい点が多いため、花心の緑や白花の一枚ずつを追うには、鑑賞者が意識的に視線を留める必要がある。 結論 本作の光は、主役を照らすだけでなく、花とガラスと水の関係を比較するために働いている。初見では白い花球が中心となるが、見続けると吸盤の下の滴が同じ重さを持ってくる。縦の境界と斜めの茎が、反射の多い画面を崩さずにまとめている。細部の輝きには過密さもあるが、日常の小物を通じて植物の見え方を新しくする作品である。