夜風に翻る夏衣の渦 (其の67)

評論

導入 本作は、提灯に覆われた櫓を囲み、波模様の衣装を着た人々が踊る情景を、大きな近景太鼓の脇から描いた作品である。中央女性は両腕を曲線状に伸ばし、近い奏者が音源を物質的に示す。縦長画面は太鼓から櫓までを急に上昇させる。振付と拍の構造を結ぶ群像画である。 中央女性の髪には赤白の小花が挿され、上向く顔の周囲へ細かな暖色を置く。右下の撥は太鼓面を斜めに横切り、まだ打たれていない一瞬の緊張を示す。左の袖は最大の波模様を持ち、中央人物の手へ向かって大きく膨らむ。櫓上の提灯は密に重なり、暗い空との境界で明るい冠を作る。踊り手の足袋と草履は地面の反射に触れ、上半身の流動を具体的な歩調へ固定する。 右の奏者の法被には大きな白い花紋があり、踊り手の波とは別の集団役割を示す。床の斜めの板目も身体の進む方向を補強する。 提灯の光は太鼓の鋲にも小さく反射する。 記述 中央女性は太い紺の波を描いた白浴衣と赤帯を着て、赤鼻緒の草履で脚を広く踏み出す。片腕を頭上へ、もう一方を水平へ伸ばし、顔を上向きにする。右下には大太鼓と撥が大きく入り、濃い衣装の奏者が背を向ける。背後には腕を上げる踊り手が密集する。上部中央の四角い櫓は橙色の提灯で覆われ、その下にも多数の人影が集まる。舗面には金と青の反射が走る。 分析 女性の腕は上向く顔を囲む広い弧を作る。大きな波模様は袖の運動を増幅し、太鼓の円が下隅を固定する。白青の衣装が赤帯と金の提灯に対して反復する色彩リズムを作る。厚い絵具は布と太鼓革へ重量を与え、分断された反射が舗面を動かす。高い櫓と近い太鼓の尺度差が急な奥行きを生む。人物の重なりも円形の踊りの密度を示す。 解釈と評価 波の図柄は協調する身体を流動する集団の場へ変えるものと解釈できる。太鼓の近さは見える身振りを拍へ直接結び付ける。密度が高く明快な構図、白、青、赤、金の色彩が評価できる。肌、布、木、革、髪、灯り、地面を描き分ける技法と描写力、奏者の視点から踊りを見る独創性も高い。 結論 第一印象では中央女性が独立して見えるが、見続けると、その曲線が太鼓の脇で生まれる大きなリズムの一部だと分かる。共同の振付へ触覚的な音楽構造を与えた作品である。

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