夜風に翻る夏衣の渦 (其の28)

評論

導入 本作は、提灯の下の輪踊りへ鑑賞者を入り込ませ、淡い青の花柄浴衣を着た笑顔の女性を近く描いた作品である。奏者、周囲の踊り手、濡れた地面、街灯、赤白の櫓が、俯瞰景とは異なる身体的な祭りを作る。縦長画面は前景の足から灯列まで動きを積み上げる。個人の身振りと共同の音を結ぶ群像画である。 中央女性の左手は指を開いて外へ伸び、右手は頭上へ曲げられるため、同じ身体に二方向の流れが生まれる。赤帯の結びは腰の動きに合わせて斜めにずれ、静止した装飾ではなく踊りの一部となる。左の三味線奏者は撥を持つ手と棹を押さえる手を描き分け、音の生成を具体的に示す。提灯列の間には白い街灯も立ち、祭礼の暖色と公共照明の明るさを対比する。 女性の草履は片足だけが地面へ接し、曲げた膝と合わせて踊りの一瞬を鮮明に止める。 記述 中央の女性は片膝を曲げて両腕を広く開き、顔を鑑賞者へ向けて微笑む。淡青の花柄浴衣には幅広い赤帯が巻かれ、長い袖が翼のように左右へ広がる。左では濃い模様法被の男性が三味線を弾き、前景を青白い衣装の人物が大きく横切る。右には濃紺の浴衣の女性が腕を上げて踊る。橙色の提灯列は奥の赤白の櫓へ収束し、上段には奏者と観客が密集する。濡れた地面は足と灯りを金色に映す。 分析 女性の腕は幅広い斜めの弧を作り、最前景の持ち上がる足が対抗する。曲がる姿勢は垂直な提灯列と櫓を横切り、静的な建築へ運動を加える。淡い青布が最も明るい身体となり、濃いコバルトの衣装に囲まれる。赤帯は踊り手と縞幕を結び、橙の灯りが暖かさを補う。群衆と夜空は透明なにじみで扱い、顔、手、楽器の棹、草履、反射には鋭い描写を置く。 解釈と評価 正面の笑顔は統率された踊りを鑑賞者への招待へ変えるものと解釈できる。奏者を明示することで、想像される音が構図上にも存在し、重なる身体は画面外の参加を示す。近接構図は力強く読みやすく、青、赤、橙の色彩も制御される。肌、布、木、提灯紙、髪、濡れた地面を描き分ける技法と描写力にも価値がある。 結論 第一印象では中央女性の個人肖像に見えるが、見続けると、その身振りが大きな音楽回路の一拍であると分かる。共同のリズムを目前の個人的な経験へ変えた作品である。

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