藤波揺れるルネサンスの階段
評論
本作は、白い余白の上に端正で極めて精緻な黒インク線画で描かれたイタリア式庭園の段々テラス、石造り階段、噴水、手すり、そして藤棚(パーゴラ)のアーチ構造に、実物のラベンダーや紫、青、黄色の紫陽花やカスミソウなどのドライフラワーをコラージュして藤棚から垂れ下がる見事な藤の花房や階段沿いの花壇を表現した、ロマンチックで優雅なミクストメディア・ガーデンアートである。緻密な建築パースと植物素材が見事に調和している。庭園の静かな風情が広がる。 画面上部には、優美な曲線を描くパーゴラアーチから本物の紫やラベンダー色の紫陽花花弁が藤の花房のように豊かに垂れ下がり、手すりの上にも花瓶が配されている。中央の丸い石造り噴水からは白い水しぶきが上がり、周囲の階段や手すり沿いには、青紫、黄色、セージグリーンの小花や乾燥葉が絨毯のように敷き詰められて、ルネサンスの宮殿庭園に咲き誇る春から初夏の豊かな自然の美を完璧に再現している。噴水の水音が聞こえるようである。 黒の精密な建築・庭園線画と、植物素材が持つ上品なパステルトーンの色彩および三次元的テクスチャーの対比が極めて優雅である。ペールラベンダー、ソフトペリウィンクル、サンフラワーイエロー、オリーブグリーン、そしてモノトーンの線画が、純白の背景の中で高貴なイタリア庭園のパレットを形成している。花弁や葉が落とす自然な陰影が、平面的ドローイングに豊かな奥行きと立体的な空間感をもたらしている。空間の余白が澄んだ光を演出する。 藤棚と噴水が彩るイタリア庭園の情景は、自然と人間の造形美の調和、ロマンチックな思索、永遠の優雅さ、そして庭園散策がもたらす心の平穏を象徴している。華やかでありながら静謐な情景は、観る者の心に深い安らぎと洗練された感動をもたらし、トスカーナの古城庭園を訪れたかのような贅沢な時間を提供してくれる。 総じて本作は、卓越した庭園建築デッサンの技術と自然素材の独創的な見立てが見事に融合した傑出した現代アート作品である。描線の緻密さと植物の優美な色彩美が高次元で調和しており、鑑賞者に豊かな余韻と洗練された感動を届ける至高の秀作であるといえる。作者の清らかな美意識が息づく名品である。